教育部門で活用される最新技術の中でも、学生が21世紀のスキルを身に付けるのに役立つ可能性が最も高いのがインタラクティブテクノロジーです。デジタルホワイトボード、プロジェクタータイプの電子黒板やディスプレイタイプの電子黒板といったツールが、学生が授業に積極的に参加して、互いに協力してプレゼンテーションを行い、活発に意見交換できるようにと活用されています。
この3つのうち、PCなどの外部機器を使わずに、これまで述べてきた機能のすべてを統合できる可能性を持っているのはディスプレイ型の電子黒板だけです。
代表的なプロジェクタータイプの電子黒板の基本構成は、プロジェクター、プロジェクターに搭載されたタッチ検出用カメラ、投写用スクリーン、専用のペン、デジタルホワイトボードソフトウェアがインストールされた外部機器の5つから成っています。プロジェクタータイプの電子黒板は、多くの場合、天井や、投写用スクリーンの固定具に取り付けられます。一度セットしてしまえば、様々な投写面をホワイトボードの代わりとして使用できます。ディスプレイタイプの電子黒板は、タッチパネル内蔵のスタンドアローン(単体で動作可能な)ハードウェアです。専用のオペレーティングシステムや、ファイルマネージャーやホワイトボードといったアプリケーションが搭載されている大型のタブレットのようなものです。タッチを感知し、タッチペンにも対応しています。ディスプレイタイプの電子黒板のほとんどがすぐに使用でき、操作方法を特別に学ぶ必要もほぼありません。
ディスプレイタイプの電子黒板は、プロジェクタータイプの電子黒板に比べ、重要な利点が3つあります。
1つは、書き易さです。ディスプレイタイプの電子黒板のほとんどが高い応答性と精度を備えている一方で、インタラクティブプロジェクターの場合、これが常に当てはまるとは限りません。タッチポイントの検出に使われる赤外線(IR)タッチ検出用カメラは、ペンの前面に取り付けられた赤外線発生部からタッチ検出用カメラの間に遮蔽物が入ってはいけません。手や袖などによって、タッチカメラへの赤外線信号の到達が妨げられると、プロジェクターは、タッチされた箇所の位置を割り出すことができなくなる可能性があります。一方、ディスプレイタイプの電子黒板のほとんどが検知方式として赤外線方式あるいは静電容量方式を採用しています。これらは両方とも、画面に取り付けられています。このため、タッチ検出も応答が早く、正確です。
2つ目の重要な違いは、画面の輝度です。ほとんどのプロジェクターには、明るい教室で画像を鮮明に映し出すほどの明るさがありません。ディスプレイタイプの電子黒板は、教室の環境光にふさわしい明るさの画像を映し出せるため、見えにくいということがありません。
3つ目の利点は、ディスプレイタイプの電子黒板が、PC等の追加の外部機器からの入力に依存せずに、ファイル再生機能があり、ホワイトボードとして単体で機能するという点です。代表的なディスプレイタイプの電子黒板には、データ転送とネットワーク接続用のポートが備わっています。これにより、ユーザーは、USBメモリといった接続した記憶装置から簡単にプレゼンテーション資料を読み込むことや、インターネットから資料をダウンロードすることもできます。
多くの点で、ディスプレイタイプの電子黒板の方がプロジェクタータイプの電子黒板よりも性能で勝っているように思われますが、プロジェクタータイプの電子黒板にも、インタラクティブディスプレイに勝る2つのサイズ面での利点があります。1つは、ディスプレイタイプの電子黒板では、追加のディスプレイを置けない場合、最大の作業スペースが画面の物理的な大きさに制限されてしまいます。投写距離によって作業エリアを調整できるプロジェクタータイプの場合、そのようなことはありません。サイズ面のもう1つの利点は、プロジェクタータイプの電子黒板の本体が非常に小さいことです。本体のスペースが重要な要素である場合は、天吊型のプロジェクターを選ぶのが効果的です。
世界の教育機関の約31%で、すでに教室にディスプレイ型の電子黒板を設置しています。この数字から、より多くの学校で、プロジェクターや電子黒板への交換やアップグレードが今後ますます進んでいくことが分かります。ディスプレイタイプの電子黒板は、その利点について広く知られるようになるにつれ、プロジェクタータイプの電子黒板に取って代わるようになるに違いありません。
プロジェクタータイプ | ディスプレイタイプ | |
作業エリア | プロジェクタータイプ 平面であればどこでも投写可能 | ディスプレイタイプ 画面 |
作業スペース サイズの拡張 | プロジェクタータイプ 投写距離による | ディスプレイタイプ 画面サイズによる |
ネットワーク 接続 | プロジェクタータイプ 〇 | ディスプレイタイプ 〇 |
最大同時 タッチ数 | プロジェクタータイプ ~4 | ディスプレイタイプ ~20 |
タッチ応答時間 | プロジェクタータイプ ~16ms | ディスプレイタイプ ~8ms |
プレゼンテーション機能 | プロジェクタータイプ | ディスプレイタイプ 内蔵 |
ホワイトボート機能 | プロジェクタータイプ 追加のハードウェアまたはソフトウェアが必要 | ディスプレイタイプ 内蔵 |
議論の際にホワイトボードを使用することは、教室中心のアクティブラーニングに欠かせないやり方です。学生たちはホワイトボードの前に集まり、マインドマップや図表を使ってアイデアを具体化し、一方、教師は要点を強調してさらに深い議論を促すことができます。
デジタルホワイトボード内蔵の電子黒板は、こういった学習体験に極めて近い状況を再現し、アイデアを具体化できる可能性も高めます。電子黒板なら、ユーザーは、(ローカルの記憶装置、クラウドストレージ、または、Blackboard、Moodle、Canvasといったバーチャルラーニング環境のいずれからでも)自身のプレゼンテーション資料を読み込むことができ、スクリーンで直接それに注釈をつけたり、テキストや読み込んだ画像などを作業スペースに挿入・移動したりすることもできます。また、ホワイトボードの内容を消すことなく、電子黒板上に新たなウィンドウを開くこともできるため、複数の作業スペースを簡単に切り替えることも可能です。デジタルホワイトボードの中には、手書き文字認識、画面キャプチャ、グラフのテンプレートといった機能があらかじめ搭載されているものまであり、より一層使いやすくなっています。電子黒板は、書き込んだメモやイラストを消したり、それらを別のメディアに転送したりする手間を省いてくれます。
教師は、ホワイトボードによる授業を、PDFやビデオなどのファイルとして簡単に出力でき、授業後に見直したり、学生全員にメモとして送信することもできます。
従来のディスプレイやプロジェクターの構成では、教師がプレゼン用のリモコンを持っていない場合、教師または発表者は常に自らのPCの近くにいて、表示される内容を操作しなければなりません。また、学生からの意見に注釈をつける場合は必ず、その後の文書化に備えてそのメモを保存できる別のエリアでも同様の作業を行う必要があります。こういった制限は、持続的なやり取りと柔軟性が求められるアクティブラーニング環境では明らかに不便です。
電子黒板を使えば、教師はこういった物理的制限から解放されます。プレゼンテーション資料をリアルタイムで調整できるため、授業をより総合的に行え、意見が自由に飛び交うようになります。インタラクティブディスプレイの中には、学生が、各自のデバイスから内蔵のホワイトボードを表示させることができる、ミラーリング機能が使えるものもあります。学生はより授業により積極的に参加しながら、各自の携帯やタブレット、ノートパソコンから、直接コンテンツを提示できます。この構成は、以下の理由で授業でより有効に活用できます。
1. 匿名で回答できることで、あらゆるタイプの学生の参加を促すことができる。
2. 大人数のクラスの授業で複数の学生が同時にコンテンツを提示できるため、
リアルタイムの協力が可能になり、より効率的に回答を集められる。
3. 遠隔地の学生が授業に参加でき、受け身の授業を能動的授業へと生まれ変わらせられる可能性がある。